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ナイトリーの脳科学の仕組みを知る

3 min

眠りを包む「音」──あなたはどんな音と眠っていますか?

昨夜、あなたはどんな音と一緒に眠りにつきましたか?

もしかすると、YouTubeで流れる睡眠音楽やASMRを聞きながら寝た方もいるでしょう。あるいは、外から聞こえる車や自転車の音をBGMのように感じていたかもしれません。 現代の都市生活では、完全な静寂の中で眠ることはほとんどありません。私たちは常に何かしらの「音」と共に眠っているのです。

音は私たちの睡眠にどんな影響を与えますか?

多くの方が、早く眠るために睡眠音楽やホワイトノイズを聞いた経験があるのではないでしょうか。しかし、これらの音が本当に睡眠の質を高める効果があるかというと、実はそうとは限りません。インターネット上で見られる多くの睡眠誘導音は、科学的根拠に基づかずに作られているものがほとんどで、その効果も限定的だといわれています。そこでナイトリーでは、過去2年間にわたりAIを活用した「睡眠誘導音波」の研究と開発を続けてきました。その成果として生まれたのが、科学的にも睡眠の質を高める効果が確認された「レイヤード・モノラルビート(Layered Monaural Beats)」です。

ここからは、この音波がどのようにして効果的に眠りを導くのか、その科学的な仕組みを紹介します。


脳波 (Brainwaves)

脳波の種類を示す図

脳波は、ニューロン(神経細胞)の活動によって生じる微弱な電気信号です。私たちの脳は、主にガンマ波(30〜100Hz)、ベータ波(12〜30Hz)、アルファ波(8〜12Hz)、シータ波(4〜8Hz)、デルタ波(0.5〜4Hz)の5種類の脳波を発しています。眠っているとき、私たちの脳は主にアルファ波からデルタ波にかけての低い周波数帯の脳波を作り出します。興味深いのは、脳が特定のリズムの音を聞いたとき、その音の周波数に合わせて脳波も同じリズムに引き込まれるという点です。

この現象は「脳波同調(brainwave entrainment)」と呼ばれ、ナイトリーの科学的な基盤となる重要な原理です。

脳波同調 (Brainwave Entrainment)

脳波が同調したことを説明する図

先ほど言及したように、脳波同調は脳波が特定の周波数に同期化される現象を意味します。いくつかの同調現象がありますが、 ナイトリーは睡眠中にこのような同期化がどうやって発生するのかに注目しました。そして研究の末にデルタ波のような低い周波数の脳波に同期化されると脳が低い速度で電気信号を作り、深い睡眠を誘導することが発見されました。この現象は過去60年間 多くの科学者によって実験され、証明されました。

ナイトリーは脳波同期化と睡眠の関係を調子さした論文で、この同期化過程の例を発見しました。Abeln等(2014)の研究では脳波同期化を使用した際に被験者の睡眠の質が向上されるという結果が現れました。ほかの研究でも脳波同期化が不眠症の治療に使用することもでき(Srinivasan等、 2021)、睡眠の誘導に役立つと明らかにされています。(Choi等、 2019)

ですが、単純に特定の周波数での音波を聞くことだけで脳波を訓練することはできません。脳波を同期化させるには特定の周波数のリズムに該当する音波の組み合わせを聞かなければなりません。よってナイトリーは モノラルビートを使用し、低い周波数の脳波を誘導する音波の組み合わせを作りました。

モノラルビート (Monaural Beats)‍

モノラルビートを生成する仕組みを説明する図脳波を効果的に誘導する音波の組み合わせは大きく三つがあります。それは、「モノラルビート」、「バイノーラルビート」「アイソクロニック」トーンです。音波の組み合わせにはそれぞれ特徴があり、その性質に合わせて適した場面で使い分けられます。

モノラルビート、バイノーラルビート、アイソクロニックトーンの違いを分析する図

バイノーラルビートは、左右の耳で異なる周波数を聞くことで効果を発揮します。そのため、イヤホンの装着が必須となりますが、睡眠中に長時間イヤホンを使用するのは耳への負担が大きく、あまり望ましくありません。一方、アイソクロニックトーンは音の刺激が強く、睡眠を誘導するには少し不向きです。そこでナイトリーは、イヤホンを使わなくても楽しめ、耳への負担も少ない「モノラルビート」を採用しました。

レイヤードモノラルビート (Layered Monaural Beats)

また、ナイトリーはより効果的なモノラルビートを見つけるため、延世大学応用脳・認知科学研究所と協力し、複数の実験と臨床研究を行いました。その結果、複数のモノラルビートを組み合わせた「レイヤードモノラルビート」が、一般的なモノラルビートよりも高い効果を発揮することが確認されました。


モノラルビートの研究結果を示す図

ナイトリーは、より良い睡眠を届けるために日々研究と改良を重ねています。

チームにはエンジニアや医療の専門家が在籍しており、それぞれの知見を生かしながら、科学的根拠に基づいた音と睡眠の関係を探究しています。

私たちの多くも、かつて不眠に悩んだ経験があります。その経験があるからこそ、同じ悩みを抱える方の気持ちに寄り添い、より良い眠りを届けたいという想いでこのプロジェクトを続けています。

ナイトリーはこれからも、皆さまが安心して眠りにつけるようサポートを続けていきます。

テーマ
参照
      Abeln, V., Kleinert, J., Strüder, H. K., & Schneider, S. (2014). Brainwave entrainment for better sleep and post-sleep state of young elite soccer players - a pilot study. European journal of sport science, 14(5), 393–402
      Srinivasan, A., Karuppathal, E., & Kalpana, R. (2021). Brainwave entrainment through external sensory stimulus: a therapy for insomnia. International Journal of Medical Engineering and Informatics, 13(4), 323.
      Choi, H., Bang, Y., & Yoon, I. Y. (2019). Entrainment of binaural auditory beats on subjects with insomnia symptoms. Sleep Medicine, 64, S72
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