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妊娠初期の不眠:原因・影響・対処法

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妊娠はとても喜びにあふれた体験ですが、その一方で睡眠の悩みなど、さまざまな変化や不調を感じることもあります。特に妊娠初期に多くの妊婦さんが経験する不眠もその一つです。

この記事では、妊娠初期に不眠が起こる原因や、母体と赤ちゃんへの影響、そして快適な眠りを保つための対処法についてご紹介します。

はじめに

不眠症とは、寝つけない、眠り続けられないといった睡眠の問題を指しますが、妊娠初期には多くの方が経験するといわれています。推計では、妊娠中のおよそ76%の女性がこの時期に睡眠の悩みを感じているとされています。

妊娠初期の不眠症の主な症状には、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなどがあります。

不眠は妊娠初期のサイン?

夜、ベッドで横になったまま眠れずにいる妊婦

不眠は、生理が遅れる前の妊娠初期のサインのひとつとして現れることがあります。これは、体内で起こるホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。ただし、不眠だけで妊娠をはっきりと判断することはできません。

それでも、一部の妊婦さんにとっては妊娠の症状のひとつとして感じられる場合があります。こうした可能性を知っておくことで、適切なケアを受けやすくなり、自分の妊娠について理解を深める助けになります。

妊娠初期に不眠が起こる原因

妊娠中、睡眠に影響するホルモンの変化

妊娠初期の数か月間に起こる不眠は、主にホルモンバランスの変化が原因といわれています。プロゲステロンやエストロゲンの分泌が増えることで、睡眠パターンが乱れやすくなります。これらのホルモンの変動は、体内の睡眠と覚醒のリズムを乱し、不眠を引き起こす要因となります。

また、こうしたホルモンの変化は、体の不快感や頻尿、吐き気などの他の妊娠初期症状も引き起こし、それがさらに睡眠を妨げることがあります。

加えて、妊娠に対する不安やストレスも不眠の一因になる場合があります。

ホルモンの影響を理解しておくことで、妊婦さん自身やパートナーが適切に対処する方法を考えやすくなります。

妊娠初期の不眠の影響

妊娠初期の不眠は、母体だけでなく赤ちゃんの発育にも影響を及ぼすことがあります。十分に眠れない状態が続くと、疲労感や気分の浮き沈み、集中力の低下を感じやすくなります。また、免疫力が低下し、体調を崩しやすくなることもあります。さらに、妊娠初期に睡眠不足が続くと、赤ちゃんの成長に影響が出る可能性も指摘されています。研究では、妊婦の睡眠障害が早産や妊娠糖尿病、高血圧のリスクを高めることがあると報告されています。

そのため、妊娠中の不眠にしっかりと向き合い、適切に対処することが母子ともに健康を守るうえで大切です。

睡眠薬やサプリメントに関するよくある不安と対処法

妊娠初期の不眠に悩む多くの妊婦さんは、薬の服用や睡眠補助剤の使用について不安を感じることがあります。どのような薬を使用する場合でも、まずは医師に相談することが大切です。医師は、それぞれの選択肢の副作用や効果について具体的にアドバイスしてくれます。また、薬に頼る前に、リラックス法や良い睡眠習慣、行動療法など、非薬物療法が第一選択としてすすめられることが多いです。それでも不眠が続き、健康に大きな影響が出る場合は、医師と相談のうえ、慎重に睡眠補助剤を使用することについて検討することがあります。

妊娠初期の不眠を改善するためのヒント

快適に眠れる寝室の環境

1. 睡眠リズムを整える

毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつくりましょう。体内時計が整いやすくなり、睡眠の質が高まります。

2. 快適な寝室環境を整える

寝室は暗く、静かで、心地よい温度に保つようにします。外の光を遮るために遮光カーテンやアイマスクを使うのも効果的です。耳栓やホワイトノイズマシンを利用して音を減らす工夫もおすすめです。サポート力のある妊娠用の抱き枕を使うと、体の負担をやわらげられます。

3. ストレスや不安を和らげる

寝る前に深呼吸や漸進的筋弛緩、ガイド付き瞑想などを取り入れてみましょう。本を読んだり、ぬるめのお風呂に入ったり、リラックスできる音楽を聴いたりすることで、気持ちが落ち着き、眠りの準備が整います。

4. 専門家に相談する

不眠が続く場合や悪化する場合は、早めに医師に相談しましょう。妊娠初期でも医療的なサポートを受けることは大切です。不眠症の認知行動療法(CBT-I)は、眠れない原因となる習慣を見直し改善する方法として効果が期待できます。場合によっては、医師から妊娠中でも使用できる睡眠補助や他の治療法を提案してもらえることもあります。

不眠で医師に相談すべきタイミング

妊娠中に一時的に眠れなくなることは珍しくありませんが、不眠が日常生活に支障をきたしたり、強い疲労感や精神的なつらさを感じる場合は、早めに医師へ相談することが大切です。

医師はまず、普段の睡眠習慣や症状の頻度・強さ、基礎疾患の有無について確認します。その後、必要に応じて身体的な診察を行い、不眠の原因となる他の病気が隠れていないかを調べます。

場合によっては、詳しい検査や睡眠専門医との相談をすすめられることもあります。より包括的に状態を把握し、適切な治療や対処法を提案してもらうためです。

家族やパートナーのためのサポート方法

1. 気持ちを支える

妊娠中は心も体もさまざまな変化があり、睡眠不足が不安やストレスを強めることがあります。眠れない悩みや不安をしっかり聞いてあげる時間を持ち、ひとりではないことを伝えましょう。

2. 家事をする

妊娠中は体の不調や疲れやすさから、普段の家事が負担になることがあります。家事や用事を代わりに行うことで、心身の負担を減らし休息の時間を確保できます。料理や掃除、買い物などをサポートして、妊婦さんがゆっくり休める環境を整えることは大きな助けになります。

3. リラックスできる環境をつくる

寝る環境は眠りの質に大きく影響します。寝室は静かで落ち着いた空間に整えましょう。寝る場所の近くでは大きな音を立てないよう気をつけ、照明も暗めにしたり自然な光を使ったりすると安心感が生まれます。ラベンダーのアロマやマッサージディフューザーを使ってリラックスを促すのもおすすめです。一緒に快適な空間をつくることで、よりよい睡眠につながります。

4. 健康的な生活習慣をすすめる

健康的な習慣は睡眠の質を高めます。無理のない範囲での散歩やマタニティエクササイズをすすめると、気分転換になり寝つきも良くなります。バランスの良い食事を心がけ、寝る直前の食事は控えるようにしましょう。やさしいヨガや瞑想、マタニティマッサージなど、ストレスを和らげる時間を一緒に持つことも大切です。

まとめ

妊娠初期の不眠はつらいこともありますが、睡眠を優先し、早めに対処することがとても大切です。不眠の原因や影響を知ることで、妊娠初期の眠りをうまく整え、心身の健康を保つ助けになります。適切な工夫やサポート、専門家のアドバイスを取り入れれば、妊娠中でも質の良い睡眠を目指すことができます。

さらに詳しい情報やサポートが必要な場合は、医療機関や専門家に相談しながら、自分に合った対策を見つけていきましょう。

テーマ
参照
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