多くの女性は、生理前や生理中になると、普段より眠りにつきにくくなったり、夜中に目が覚めやすくなったり、眠っても満足感が得られないと感じます。一方で、生理による睡眠の変化をあまり感じない女性もいます。¹こうした違いはありますが、生理周期にともなうホルモン変動が睡眠の質や構造に影響を与えることは、科学的にも明らかになっています。
では、なぜ生理の時期になると、眠りにくさを感じる人が多いのでしょうか。
排卵後は睡眠パターンが変わる!?
女性の生理周期は大きく2つの時期に分けられます。
生理開始日から排卵前までを「卵胞期(follicular phase)」、排卵後から次の生理直前までを「黄体期(luteal phase)」と呼びます。睡眠の変化は、主にこの「黄体期」に目立って現れます。
排卵後〜生理前の睡眠の特徴
深い睡眠である徐波睡眠(N3睡眠)は、黄体期・卵胞期ともに比較的安定して保たれますが²、夢を見る睡眠であるレム睡眠(REM睡眠)は、黄体期に減少する傾向があります。³この現象は、排卵後〜生理前に分泌されるプロゲステロン(progesterone)というホルモンと関連していることが知られています。
体温は上がるが調整しにくくなる
プロゲステロンには体温を上げる作用があり、分泌量が多くなる黄体期には基礎体温が平均で約0.4〜0.7℃ほど上昇します。一方で、睡眠段階の中でもレム睡眠(REM睡眠)では、もともと体温調節機能が低下します。そのため、黄体期は高めの基礎体温に加えて体温調節能力も下がるため、眠っている間により不快さを感じやすくなるのです。
眠いのに熟睡できない理由
プロゲステロンは抑制性受容体に作用し、眠気を引き起こす働きがあります。 そのため、生理前に強い眠気を感じる方が多いのです。しかし、基礎体温の上昇によって深い睡眠が妨げられるため、「眠いのにぐっすり眠れない」という状態になりやすくなります。
実際、アメリカ国内の複数地域に住む多民族の中年女性約3,000人を対象にした研究では、生理開始1週間前の睡眠は、その前の週と比べて睡眠効率が約5%低下し、総睡眠時間も25分短縮していました。さらに、本人たちも睡眠中の不快感を感じたと報告しています。 つまり、生理前の週は、客観的にも主観的にも睡眠の質が下がることが示されています。⁵
生理期間中の睡眠パターン
生理が始まる時期には、プロゲステロンとエストロゲンの両方の分泌量が急激に低下します。 プロゲステロンには眠気を促す作用があり、エストロゲンには感情を安定させる作用がありますが、この2つのホルモンが一気に減少することで、むしろ眠りにくく感じることがあります。さらに、生理期間中は生理痛や胸の張り、腹部の膨満感など、さまざまな身体的不快感が現れ、気分が悪くなることもあります。こうした身体的・精神的な変化が、睡眠を妨げる原因になるのです。一般的な痛みや不快感だけでも眠りづらくなりますが、強い生理痛や月経前不快気分障害(PMDD)がある場合、不眠症や過眠症を経験する確率は2〜3倍に上がるといわれています。⁶
また、月経前症候群(PMS)が重い人は、主観的に感じる睡眠の質も低下しやすいことがわかっています。⁷
生理周期ごとの快眠ヒント
実は、生理周期における睡眠の質を確実に向上させる方法は、まだ研究段階です。⁸それでも、毎月やってくるホルモンの変化の中で、少しでもぐっすり眠れるようにするためのコツはいくつかあります。ここでは、日常生活のちょっとした工夫で実践できる、快眠のヒントをご紹介します。
生理前
- 涼しく保つ:黄体期は基礎体温が上がるため、寝室を少し涼しめに保つと眠りやすくなります。寝る1〜2時間前にぬるめのシャワーを浴びるのもおすすめです。
- 軽い運動でコンディションを整える:この時期は体が重く、疲れやすくなります。無理にハードな運動をするよりも、軽いジョギングやピラティス、ヨガなどの低強度の有酸素運動が効果的です。
生理中
- 痛みをやわらげる:生理痛やお腹の張りがつらいときは、ぬるめのお湯でシャワーを浴びたり、温熱パッドや湯たんぽで温めてみましょう。痛みを和らげ、体の緊張をほぐすことで眠りやすくなります。
- 体のサインに合わせて運動する:生理中は、普段より運動の負荷や回数を減らすか、ウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動がおすすめです。痛みや疲れが強い場合は、無理せず十分に休養をとることが一番です。
生理後
- 運動で睡眠効果を最大化:生理が終わって排卵期に入ると、エストロゲンの分泌が高まり、エネルギーや筋力も上がります。⁹この時期は、高強度のインターバルトレーニング¹⁰やウェイトを使った筋トレにも挑戦しやすいタイミングです。¹¹あまり遅い時間でなければ、運動によって睡眠の質を高めることができます。
そして何より大切なのは、普段から規則正しい生活リズムを保つことです。体がつらいときこそ、決まった時間に寝て起きることで、ホルモン変化の中でも体内時計を安定させられます。 また、就寝前にしっかりと体の緊張をほぐすことは、安定した眠りにつながります。
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