時計は深夜2時を指しているのに、画面に集中しきりで、コントローラーを置く気になれない——そんな夜、ありますよね。

朝、目覚ましが鳴っても体がすぐに動かない。起き上がっても頭はぼんやりしていて、まぶたの重さが残っている。
こうした朝の不調は、前日の夜につい長くなってしまったゲーム時間が影響していることがあります。夜遅くまでゲームをする習慣は、知らないうちに睡眠の質に影響を与えているのです。
この記事では、ゲームと睡眠の関係について、科学的な視点から整理していきます。あわせて、ゲームを楽しみながらも、睡眠をしっかり確保するための現実的な工夫についても紹介します。
ゲームは睡眠トラブルの原因になる?

ゲームは、実は睡眠に少なからず影響を与えることがわかっています。その理由の一つが「画面から受ける刺激」です。ゲームに使うディスプレイを含め、スクリーンを見る時間が長くなるほど、睡眠リズムが乱れやすくなると指摘されています。
2022年の研究では、スクリーンから発せられるブルーライトが、睡眠と覚醒のリズムを整えるホルモン「メラトニン」の分泌を抑えてしまうことが明らかになりました。メラトニンが十分に分泌されないと、脳が「そろそろ眠る時間だ」と判断しにくくなり、寝つきが悪くなったり、不眠につながったりする可能性があります。
さらに別の研究では、就寝前に約2時間半ゲームをすると、入眠時間が平均で40分ほど遅れ、レム睡眠の量も減少することが示されました。レム睡眠は夢を見るだけでなく、心の回復やメンタルヘルスにとっても重要な役割を担っています。
また、2007年の研究では、ゲームをよくする子どもほど、脳の回復や老廃物の排出に欠かせない「深い睡眠」が少なくなる傾向があることも報告されています。
もし最近、寝つきの悪さや眠りの浅さを感じているなら、就寝前のゲーム時間を少し見直してみるだけでも、改善につながるかもしれません。
ゲームとアドレナリンの関係とは?

ゲームは、体と心の両面に強い刺激を与え、睡眠の質に大きく影響することがあります。その背景には、ゲーム中に起こる生理的・心理的な反応があります。ここでは、ゲームとアドレナリンがどのように睡眠に影響するのか、その仕組みを科学的な視点から見ていきます。
アドレナリンの急上昇
高い緊張感のあるゲームや対戦型のゲームをプレイしていると、体は強い刺激を受け、アドレナリンが一気に分泌されることがあります。これは、血中にエピネフリン(アドレナリン)が放出されることで起こる反応で、いわゆる「闘争・逃走反応」と呼ばれる状態です。
アドレナリンは、ストレスや興奮を感じたときに副腎から分泌されるホルモンで、体をすぐに行動できる状態へと切り替える役割を持っています。この反応によって心拍数が上がり、意識は冴え、緊張状態が高まります。その結果、体も脳も覚醒したままになり、気持ちを落ち着かせたり、自然に眠りに入ったりすることが難しくなってしまうのです。
ドーパミンの分泌
ゲームをしていると、楽しい・うれしいと感じた瞬間にドーパミンが分泌されます。これは「達成した」「勝てた」という感覚と結びつく脳の反応で、気分を高め、次も続けたいという意欲を生み出します。その状態が続くと脳は興奮したままになり、気持ちを落ち着かせる切り替えがうまくいかなくなります。結果として、布団に入っても頭が冴えたままで、なかなかリラックスできず、眠りに入りにくくなってしまうのです。
コルチゾールの上昇
熱中するようなゲームプレイが続くと、興奮や緊張によってコルチゾールの分泌が高まりやすくなります。コルチゾールはストレスに対応するためのホルモンですが、分泌量が多い状態が続くと、体内時計が乱れやすくなります。その結果、寝つきが悪くなったり、深い眠りに入りにくくなったりして、睡眠の質そのものが低下してしまうのです。
睡眠の構造が乱れる理由
ゲームによる強い刺激は、睡眠の「構造」そのものにも影響を与えます。睡眠は、レム睡眠(REM睡眠)とノンレム睡眠(ステージ1〜3)といった複数の段階を行き来しながら成り立っていますが、夜遅くまでのゲームはこのリズムを乱しやすくなります。
特に、激しいゲームをしたあとは脳が興奮した状態のままになり、なかなか眠りに入りにくくなります。その結果、入眠が遅れるだけでなく、眠りが浅く途切れやすくなり、体や脳をしっかり回復させる「質の高い睡眠」が減ってしまいます。こうした状態が続くと、寝たはずなのに疲れが取れない、という感覚につながりやすくなるのです。
スクリーンの光とブルーライトの影響
ゲームでは長時間スクリーンを見続けることが多く、その結果、画面から発せられるブルーライトを浴びやすくなります。ブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制することが知られています。メラトニンの分泌が低下すると、入眠までに時間がかかったり、就寝時刻が後ろ倒しになったりしやすくなり、睡眠の質にも悪影響を及ぼす可能性があります。
ゲームは睡眠にどのような影響を与えるのか?
さまざまな研究から、特に就寝前のゲームは、寝つきを悪くし、睡眠の質を下げやすいことがわかっています。ゲームによる刺激が脳を覚醒させた状態に保ってしまうため、スムーズに眠りに入れなくなるのです。では、ゲームがどのように睡眠リズムに影響を与えるのか、そのポイントを整理して見ていきましょう。
1.覚醒状態が高まり、寝つきにくくなる
就寝前にゲームをすると、眠りに入りにくくなることがあります。ゲームはもともと集中力や判断力を引き出すように作られており、プレイしている間、脳は活発に働き続けます。その状態のまま布団に入ると、気持ちや思考がなかなか切り替わらず、リラックスするまでに時間がかかってしまいます。結果として入眠が遅れ、睡眠リズムが後ろ倒しになりやすくなるのです。
2. ブルーライトが睡眠に与える影響
画面から発せられるブルーライトは、体内時計に影響を与えやすいとされています。脳が「まだ昼間だ」と錯覚してしまい、時差ボケのような状態を引き起こすこともあります。その結果、眠りを促すメラトニンの分泌が遅れてしまいます。そのため、体は疲れているはずなのに、就寝直前までゲームをしていると、なかなか寝つけないと感じることが増えてしまうのです。
3.夜遅くまでのゲームによる睡眠リズムの乱れ
夜遅くまでゲームをすると睡眠と覚醒のリズムがずれやすくなり、朝起きるのがつらくなったり、睡眠不足につながったりします。
4.睡眠障害のリスクが高まる
夜更かしのゲームが習慣になると、不眠などの睡眠トラブルにつながりやすくなり、体や心の調子にも影響が出てきます。特に、寝る直前までゲームをする生活が続くと、眠りが浅い状態が当たり前になってしまい、そのリズムを整え直すのが難しくなります。睡眠の質が下がると、日中の体調や集中力、記憶の定着にも影響が出やすく、結果として全体的な生活の質を下げてしまうことがあります。
夜更かしゲーマーのための睡眠対策

夜にゲームを楽しむ人に向けて、睡眠の質を保つためのポイントをいくつかご紹介します。
プレイ時間をあらかじめ決めておく
睡眠を妨げる夜更かしゲームを防ぐためには、あらかじめ「ここまで」と区切る時間を決めておくことが大切です。就寝の1〜2時間前にはプレイを終えるようにすると、心と体が少しずつクールダウンし、布団に入ったときに眠りに入りやすくなります。ゲームをやめる目安の時間を設けることで、睡眠リズムが整いやすくなり、結果として休息の質も高まります。
ブルーライト対策を取り入れる
多くのデバイスの画面はブルーライトを発しています。その影響を抑えるために、スマートフォンやタブレット、パソコンに搭載されているブルーライト軽減機能や専用アプリを活用してみましょう。こうしたフィルターを使うことで、就寝前の目や脳への刺激を和らげ、睡眠リズムへの影響を減らすことができます。結果として、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されやすくなり、より自然に眠りに入りやすくなります。
就寝前にリラックスする習慣をつくる
就寝前にリラックスできる習慣を取り入れることで、体に「そろそろ休む時間だ」と自然に伝えることができます。ゲームを終えたあとは、本を読む、落ち着いた音楽を聴く、深呼吸をするなど、気持ちを静める行動に切り替えてみましょう。こうした流れを作ることで、ゲームによる高揚状態から穏やかな状態へと気持ちが移りやすくなり、スムーズに眠りにつきやすくなります。
睡眠時間をできるだけ一定に保つ
平日・週末を問わず、就寝時刻と起床時刻をできるだけ一定に保つことが重要です。規則的な睡眠スケジュールは体内時計の働きを整え、入眠や起床をスムーズにします。毎日の睡眠リズムが安定することで、体が自然な睡眠・覚醒のサイクルを覚え、結果として睡眠の質の向上につながります。
快適な睡眠環境を整える
寝室は、睡眠に適した状態に整えておくことが大切です。室温をやや低めに保ち、できるだけ暗く静かな環境をつくりましょう。寝具は自分に合った快適なものを選び、必要に応じて遮光カーテンやホワイトノイズを取り入れるのも有効です。
こうした環境を整えることで、夜遅くまでゲームをした日でも、気持ちを切り替えてリラックスしやすくなり、眠りに入りやすくなります。また、ベッドは「眠るための場所」として使うことを意識し、作業やゲームには使わないようにすると、脳が自然と睡眠モードに入りやすくなります。
長時間プレイの合間に休憩を取る
長時間ゲームをする場合は、こまめに短い休憩を取りましょう。画面から目を離し、軽く体を伸ばしたり、目を休ませたりすることが大切です。こうした休憩を挟むことで、目の疲れや精神的な疲労が軽減され、ゲーム後に気持ちを切り替えやすくなります。その結果、就寝前のリラックスにつながり、より良い眠りに備えやすくなります。
ゲームは不眠の原因になる?
結論から言うと、ゲームの習慣が不眠につながることは十分にあります。寝る直前までゲームをしていると、脳が興奮した状態のままになり、なかなか気持ちを切り替えられません。その結果、布団に入っても眠れなかったり、眠りが浅くなったりしやすくなります。
また、ゲーム画面から出るブルーライトも影響します。体が「まだ起きている時間だ」と勘違いしてしまい、眠気を促すホルモンの分泌が遅れてしまうのです。こうした状態が続くと、寝つきの悪さが習慣化し、不眠につながることもあります。
まとめ
夜遅くまでゲームを楽しむ時間は魅力的ですが、その一方で、睡眠への影響にも目を向けることが大切です。工夫次第で、ゲームを楽しみながらも、必要な休息をしっかり確保することは十分に可能です。ゲームの時間や区切り方を少し見直し、自分なりのルールを持つことで、好きな世界を楽しみつつ、睡眠を犠牲にしない生活が目指せます。
大切なのは、ゲームと睡眠のバランスを見つけること。そのサポートとして、ナイトリーを取り入れてみるのも一つの方法です。ナイトリーは、脳科学の知見をもとにしたレイヤード・モノラルビートとAI技術を活用し、一人ひとりに合った睡眠環境づくりをサポートします。白熱したゲームのあとでも、気持ちを落ち着かせ、質の高い眠りへと切り替える手助けをしてくれるでしょう。ゲームへの情熱と心地よい眠り、そのどちらも大切にしたい人にとって、ナイトリーは心強い味方になるかもしれません。
